退職を考えはじめたとき、誰かに相談すべきか、それとも自分の中で結論を出すべきか。この選択自体が新たな悩みとなることも少なくありません。
退職の悩みには「誰かに相談した方がいいケース」と「一人で冷静に考えた方がいいケース」があり、状況に応じて適切に判断する必要があります。
本記事では、相談した方がよりいい決断につながるケースに焦点を当て、相談相手の選び方までを徹底解説します。これから退職について考えようとしている方は、ご自身の状況を見極めるためにも、ぜひお読みください。
退職について相談した方がいいのはどんなとき?

退職を考えるとき、十分な情報を集め、冷静な判断のもとで決意が固まっているのであれば、必ずしも誰かに相談する必要はありません。しかし、以下のようなケースでは、信頼できる相手に相談することで、よりいい決断につながる可能性が高くなります。それぞれの状況に応じて、適切な相談相手を見つけることが大切です。
感情的になっているとき
以下のような場合には、第三者の客観的な視点が必要です。
- 上司との衝突直後
- パワハラを受けた直後
- 仕事のミスが重なったとき
感情的な状態で退職を決意すると、後から「あのとき少し冷静に考えれば良かった」と後悔することもあるかもしれません。
判断材料が不足していると感じるとき
退職したいのだけれど、まだ少し迷いがあって行動に移せない…そのようなときには、まだ決意に必要な情報が足りていないのかもしれません。このようなときには、相談すると、新たな視点や気づき、情報を得られます。
迷いの原因・要因の例を下記にあげました。
- 転職市場がわからない
- 自分の市場価値がわからない
- 社内の異動可能性を把握できていない
相談している間に、自分の気持ちがはっきりしてくるでしょう。
自分の体や心の状態が気になるとき
以下のような場合にも、相談した方がいいでしょう。
- 不眠が続いている
- 出社時の体の不調
- 休日の憂うつ感
薬剤師の立場から見ても、これらの症状は一時的な不調ではなく、健康上の警告サインの可能性があります。特に複数の症状が同時に現れているときや、症状が長期化しているときには、産業医や専門医への相談を検討すべきでしょう。 心身の健康を損なってからの転職や環境の変化は、新しい環境へなじむのをより難しくする可能性があります。
【状況別】最適な相談相手とは

退職の悩みは人それぞれ違いますが、内容によって相談相手も変わってきます。ここでは、退職を考えたときに最適な相談相手を紹介します。「ご自身の周囲の誰に当てはまるか」を考えながら、読んでみてください。
体調面の不安が大きいとき
心身の疲労や不調があきらかな場合は、何よりもまず医療の専門家に頼りましょう。以下の専門家は、それぞれ異なるアプローチであなたの健康と今後の働き方をサポートしてくれます。
- かかりつけ医:日頃からあなたの健康状態を把握しているため、わずかな体調の変化にも気づきやすく、初期段階での適切なアドバイスがもらえます。
- 産業医:職場の労働環境と健康問題の因果関係を客観的に判断する専門家です。業務量の調整や休職の提案など、会社側と連携した現実的な解決策を提示してくれます。
- 心療内科医:ストレスによる不眠、胃痛、気分の落ち込みなど、心と体のバランスが崩れていると感じた際の専門医です。診断書の発行により、休職手続きがスムーズになることもあります。
- 薬剤師:日常的な健康相談の窓口です。病院へ行くべきかの判断に迷ったときや、市販薬での対処に限界を感じた際に、医療機関への受診を後押しする役割も担います。
【具体的な相談例と得られたアドバイス】
・相談前の状況:連日の残業で不眠が続き、「もう辞めるしかない」と思い詰めていました。
・相談先:産業医
・結果・アドバイス:「今は正常な判断ができる状態ではないため、退職ではなく『休職』を選択してまずは休むこと」と助言されました。結果的に3カ月の休職を経て心身を回復させた後、冷静な状態で自身の今後について考えることができました。
自分のキャリアに迷っているとき
「このまま今の会社にいていいのか」「自分にはもっと合う仕事があるのではないか」と、キャリアの方向性自体に迷いがある場合は、客観的な視点を持つプロや経験者に相談するのが有効です。
- 社外メンター:社内の利害関係に縛られないため、フラットな立場で中長期的なキャリア形成の視点から助言をしてくれます。
- キャリアカウンセラー:あなたの強みや価値観を棚卸しし、市場価値を客観的に評価してくれる専門家です。今の会社に残るべきか、転職すべきかの判断基準を明確にしてくれます。
- 転職経験のある同業者:同じ業界ならではの内情や、転職活動の苦労、成功の秘訣など、実体験に基づいた生の声を聞くことができます。
【実際の相談事例と結果】
・相談前の状況:今の仕事にやりがいを感じられず退職を考えていましたが、自分に何ができるのか分からず身動きが取れませんでした。
・相談先:キャリアカウンセラー
・結果・アドバイス:対話を通じて、自分では当たり前だと思っていた「調整力」や「特定分野の専門知識」が、他業界でも高く評価されるスキルだと気づかされました。結果、漠然とした不安が消え、異業種への前向きな転職を果たすことができました。
金銭面の不安が強いとき
退職に踏み切れない大きな理由の一つが、経済的な問題です。収入が途絶えるリスクを正確に把握し、対策を練るためには、現実的な数字と向き合う必要があります。
- ファイナンシャルプランナー(FP):退職後の生活費、年金や健康保険の切り替えにかかる費用などを総合的に試算し、いつまでなら無収入でも生活が成り立つかを算出してくれます。
- 退職経験のある先輩: 失業保険(雇用保険)の受給時期や、退職直後に「思っていたより住民税の支払いがきつかった」といった、経験者ならではの金銭事情を教えてくれます。
- 家族:退職は家計全体に影響するため、配偶者や家族への相談は不可欠です。一緒にライフプランを見直し、協力を得ることは精神的な安心感にもつながります。
【具体的な試算例:退職後3カ月の生活防衛資金】
退職後、すぐに次の仕事が決まらない場合を想定し、FPと以下のような試算を行うことで不安を大きく軽減できます。
以下は、単身者の概算例です。
- 毎月の基本生活費:200,000円 × 3カ月 = 600,000円
- 社会保険料・税金等(※):約50,000円 × 3カ月 = 150,000円
- 予備費(急な出費や転職活動費):100,000円合計必要額: 850,000円
(※)国民健康保険、国民年金、住民税など。前年度の所得により変動します。
このように「85万円の貯蓄があれば、最低3カ月は焦らず次の道を考えられる」と具体的な数字を割り出すことで、漠然としたお金の不安が計画可能な事実へと変わります。
相談前に自分でできる準備

誰かに相談しようと決めても、頭の中が整理されていない状態では、悩みや希望をうまく伝えられないかもしれません。有意義なアドバイスをもらい、自分自身の納得感を高めるためにも、相談前に以下の準備をしておくことをおすすめします。
感情と事実の切り分け
悩みを抱えていると、どうしても「辛い・許せない・不安だ」という感情が先行してしまいがちですが、相談相手に状況を正確に理解してもらうために、「客観的な事実」と「主観的な感情」を分けて整理してみましょう。
【事実の例】
- 今月は残業が60時間を超えている
- 上司から皆の前で叱責された
- 月に3回、大きなミスをした
【感情の例】
- 体力的に限界で辛い
- 自分ばかり責められて悲しい
- 自信を失って夜眠れない
ノートやスマートフォンのメモ帳などに書き出してみることで、自分自身の頭の中を冷静に見つめ直せます。
相談相手に何を期待するのか
「相手にどうしてほしいのか」というゴールを自分の中で明確にしておきましょう。目的によって、相談の仕方も変わってきます。
- 共感してほしい:とにかく今の辛い気持ちを聞いて受け止めてほしい(家族や友人向け)
- 解決策がほしい: 今後のキャリアや法的・金銭的なアドバイスがほしい(専門家やキャリアカウンセラー向け)
- 判断してほしい:今の体調が休職に値するレベルなのか知りたい(医師や産業医向け)
相談の冒頭で「今日はアドバイスが欲しくて」「まずは話を聞いてもらいたくて」と伝えるだけでも、コミュニケーションは格段にスムーズになります。
必要な情報収集
より具体的なアドバイスをもらうためには、客観的なデータや資料があると役立ちます。相談相手に合わせて、以下のようなものを準備しておきましょう。
【医療機関や産業医へ相談する場合】
- 睡眠時間の記録や、体調不良の症状(頭痛、胃痛など)を記録したメモ
- 直近の健康診断の血液検査結果など
- 残業時間や出退勤の記録(過労の証明として)
【キャリアカウンセラーやFPへ相談する場合】
- 現在の給与明細や源泉徴収票
- 簡単な職務経歴(これまでどんな業務を担当してきたか)
- 毎月の生活費の大まかな内訳
ハラスメントを受けた場合には、証拠になるデータ(メール・写真など)があると、思い込みでないことを相談相手にも伝えられます。
まとめ|退職に迷いがあるときには、状況に合った相手に相談してみよう

退職という大きな決断を前にすると、視野が狭くなり「今の会社で耐え続けるか、辞めるか」の二択しか見えなくなってしまうことが少なくありません。
しかし、他者の視点が入ることで、「部署異動の交渉をする」「休職して心身を回復させる」「働き方を変えて現職にとどまる」といった、今まで思いつかなかった第三の選択肢に気づけます。また「誰かに話す」という行為そのものに、大きなデトックス効果があります。言葉にして人に伝える過程で、自分でも気づいていなかった「本当の希望」や「譲れない価値観」が明確になり、自然と進むべき道が見えてくることも多いのです。
胃腸薬や睡眠改善薬で症状を抑え無理を重ね、本格的に体を壊してしまう方がいる一方、産業医や心療内科に相談し、休職や退職、転職という選択をし、本来の明るさを取り戻したケースもあります。
誰かに相談することは、逃げや甘えではありません。ご自身の心と体を守り、よりいい未来を選ぶための立派な行動です。一人で抱え込まず、最適な相談相手を見つけて、最初の一歩を踏み出してみてください。

